秀吉時代の面影を感じる大和街道。
歴史の足跡を追うと、五感で茶を愉しめる施設に辿り着く。
宇治抹茶を使用した絶品スイーツやフォトジェニックな茶葉の展示などが楽しめるとあって、若者からも人気のスポットだ。
文化の薫りを感じる佇まい。
建物は市の景観重要建造物に指定されている。
暖簾を潜ると重厚感のある石臼が迎えてくれた。
碾茶の葉が僅かずつ抹茶へと変化してゆく様を拡大鏡で観察していると、ひと匙の抹茶の有り難さ、そして一服の茶に込められた茶人の心の奥深さを感じさせられる。
通路を奥へと進むと、其処には百年以上も前の蔵を改装したカフェが在った。
老舗茶舗ならではの味わいが堪能できると評判が高いこちらの店。
店内は華やかな笑顔で溢れている。
茶の淹れ方を丁寧に教えてもらう者や、写真をSNSでシェアする者。
甘味を頬張り目を細める者や、運ばれてきた皿に思わず歓声を上げる者。
人々が語り合う言葉は、楽し気な音楽のように空間を満たしている。
中庭には茶の木が植わっており、心地良いそよ風が緑の葉を撫でていた。
ガラス張りの菓子工房では、茶を使ったスイーツなどが手際よく作られている。
真剣な眼差し、繊細な作業。
小さな花が咲くように、優しい幸せが一つひとつ灯されてゆく。
出来上がった菓子はカオリウムと呼ばれる部屋で味わうことができる。
中を覗いてみると、皆菓子を味わい、語らい、寛いでいた。
光の入り具合を綿密に計算し、覆い下栽培の茶園を表現したという特別な空間。
宇治では茶の木に覆いを被せる栽培方法を見かけることがあるが、覆い下の茶葉の輝きを我々が目にする機会はそう多くはない。
その感動を一年中、誰でも感じ取れるようにと新茶葉ハーバリウムが展示されている。
溢れ出すような美しさに、思わず感嘆の声が漏れた。
室内ではダイナミックな映像が流れており、その臨場感にもまた圧倒される。
スクリーンが上がると茶の焙煎機が登場。
リズミカルに稼働する様は目にも楽しく、気付けば大人も子供も夢中になっている。
そしてその芳しい香りには、誰もが幸せな魔法にかかってしまうようだった。
目を丸くする子供達、微笑みを交わす男女。
勿論、焙じたての茶を味わうのも格別な体験だ。
深い香りとふくよかな癒しが、喉をゆっくりと潤してゆく。
心が溶ける至福のひと時。
ふと足元を見ると、かつて茶葉の「合組」で使用されていた鉄板が静かな存在感を放っていた。
伝統と歴史を守りながらも新たな価値を創造する森半の精神を感じ、冷めやらぬ興奮と共に外へ出る。
街道に面した店舗では多くの客が茶や菓子を買い求め、人々の眩い幸せが交差していた。